日本橋七福神めぐり『江戸の残り香、未来のノート』Short_Story

Private_佐久間とやよい 短編(フィクション)
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【特別企画:佐久間&ヤヨイ 初の完全Privateデート編】

『甘酒横丁の湯気と富塚の笑顔——今日だけは私が手を引く、新春の福歩き』

第一章:取材ノートは置いてきて——お姉さんヤヨイの宣言

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新春の賑わいが少し落ち着いた、一月半ばの日曜日。 日本橋・人形町の駅出口から地上へ上がると、冬の冴えわたる青空から柔らかな日差しが降り注いでいた。 待ち合わせのからくり櫓(やぐら)の前。佐久間学は、いつもの取材用の大型カメラバッグを持たず、すっきりとした厚手のチェスターコート姿で立っていた。そこへ、小走りで駆け寄ってくる足音が響く。

「佐久間君! お待たせしちゃったかしら!」

椿色の華やかな小紋に、ふんわりとした白いファーショールを巻いたヤヨイが、息を弾ませながら丸眼鏡の奥の瞳を輝かせていた。その手元には、いつも抱きしめている分厚い取材ノートも、重い一眼レフも握られていない。

「いいえ、ちょうど今着いたところです。……ヤヨイさん、本当にノートもカメラも持ってこなかったんですね」

「当たり前じゃない! 今日は『チームケロ』の仕事取材じゃなくて、正真正銘のプライベートデートなんだから! いつも佐久間君には荷物を持ってもらって、エスコートされてばかりでしょう? だから今日だけは……年上の私が、佐久間君をばっちりリードして楽しませてあげるわ!」

ヤヨイは胸を張り、いたずらっぽく微笑むと、佐久間の逞しい右腕をきゅっと自分の両手で抱え込んだ。

「え……っ、ヤヨイさん?」

普段は冷静沈着なプロデューサーの佐久間が、不意の密着に目を丸くし、耳の先端をわずかに赤く染める。

「ふふっ、遠慮しないで! 今日は私が佐久間君の専属ツアープランナーよ。さあ、まずは甘酒横丁から出発進行!」

第二章:甘酒横丁の食べ歩きと、佐久間君の「あーん」

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ヤヨイが腕を引いて向かったのは、下町の美味しそうな匂いが立ち込める甘酒横丁。 最初に向かった老舗の甘酒屋で、湯気立つ紙コップを二つ受け取る。

「ほら、佐久間君。熱いから気をつけて飲んでね。麹の自然な甘みが身体に染み渡るわよ」

「いただきます。……あ、本当に優しい甘さですね。身体の芯から温まります」

「でしょう? ほら、次はあっちの行列! 高級鯛焼本舗よ!」

薄皮でパリッと焼き上げられた熱々の鯛焼きを購入すると、ヤヨイは嬉しそうに半分に割り、湯気が立ち上る頭側を佐久間の口元へ差し出した。

「はい、佐久間君! お仕事の時は半分こするだけだったけれど……今日はデートだもの。『あーん』して食べてみて!」

「えっ……!? こ、ここでですか? 通行人もたくさんいますし……っ」

「もう、佐久間君ったら顔を赤くして! ほら、お口を開けないと餡子が冷めちゃうわよ?」

ヤヨイがお姉さんらしい茶目っ気たっぷりの笑顔で見つめると、佐久間は観念したように小さく息を呑み、鯛焼きをぱくりと頬張った。

「……っ(もぐもぐ)……とても、香ばしくて美味しいです」

「ふふっ、大成功! 佐久間君のそんな照れた顔、取材の時は絶対に見られないから新鮮で可愛いわね!」

「……ヤヨイさんには敵いませんね」

佐久間は困ったように眉を下げつつも、その表情には隠しきれない幸福感が溢れていた。さらに二人は、老舗のお茶屋で極上ほうじ茶のソフトクリームをシェアし、水天宮前で焼きたての人形焼を頬張りながら、終始ヤヨイが佐久間を引っ張る形で賑やかな通りを楽しんだ。

第三章:椙森神社の富塚と、逆転の手のひら

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お腹も心も満たされた二人は、人形町の路地を抜けて、静けさを取り戻した椙森神社の境内へ。 恵比寿神に二人で並んで手を合わせ、富くじの歴史を伝える「富塚」の石碑の前に佇む。

「取材の時も思ったけれど、江戸の町民たちが夢を託したこの場所って、本当に温かい気が満ちているわね」

ヤヨイは富塚を見つめながら、ふっと柔らかい表情を浮かべた。

「佐久間君、取材の時に『僕の人生であなたに出逢えたことが一生の一等賞』って言ってくれたでしょう? あの言葉、本当に嬉しくて……何度も心の中で反芻していたの」

ヤヨイは佐久金の方へ向き直り、丸眼鏡の位置を直しながら真っ直ぐに見上げた。

「私の方こそよ、佐久間君。私の不器用な言葉を信じて、誰よりも大切にプロデュースしてくれて、こんなに素敵な世界を見せてくれるあなたに出逢えたこと……私の人生にとって、これ以上ない最高の大当たりなんだから!」

ヤヨイはそう告げると、自分から佐久間の大きな右手をギュッと両手で握りしめた。

「だからね、仕事の時だけじゃなくて……プライベートでも、ずっと私の隣で手を繋いでいてね、佐久間君」

ヤヨイの澄んだ瞳と、柔らかな手の温もり。 佐久間は一瞬だけ息を呑んだが、次の瞬間、いつもの知的で男らしい眼差しへと戻り、ふっと優しく微笑んだ。

「……参りましたね。今日はヤヨイさんにリードされるつもりでしたが、そんな可愛いことを言われたら、男としてじっとしていられません」

「え……?」

佐久間は包まれていた自分の右手をくるりと返し、逆にヤヨイの華奢な手をガチッと力強く握り直すと、そのまま自分のコートのポケットの中へそっと引き入れた。

「あ……佐久間君……っ」

「ポケットの中なら、もっと温かいですよ」

ポケットの中で重なる二人の手のひら。佐久間の指先から伝わる確かな熱が、ヤヨイの頬を一気に朱色へと染め上げる。

「もう……っ! 途中までは私がお姉さんとして格好よくリードしていたはずなのに、最後にはやっぱり佐久間君に男前なところを持っていかれちゃうなんて……ズルいわ」

「ふふっ、お互い様です。さあ、冷えないうちに老舗の喫茶店で温かい珈琲でも飲みましょうか。……今度は僕がエスコートします」

「……うんっ! 喜んでついていくわ!」

冬の日本橋の夕暮れに差し込む金色の光と、コートのポケットの中で固く結ばれた温もり。 取材ノートを閉じた二人の初めてのプライベートデートは、言葉では書ききれない甘い余韻を残しながら、どこまでも穏やかに続いていくのだった。

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