東京福めぐり(浅草神社編)『江戸の残り香、未来のノート』Short_Story

浅草神社、拝殿前、佐久間とやよい 短編(フィクション)
浅草神社、拝殿前、佐久間とやよい

【特別短編:浅草神社編】『熱狂の三社祭と、二天門やぶで手繰る『大丈夫』の福』

[1. 観光客で溢れ返る三社祭と、佐久間のエスコート]

五月中旬、江戸三大祭りの筆頭『三社祭』に沸く浅草神社。 熱気あふれる境内は、宮神輿を担ぐ熱い掛け声と、国内外から訪れた無数の観光客で埋め尽くされていた。

「はぁ……っ! 佐久間君、見てちょうだい! 地鳴りみたいな『ワッショイ!』の掛け声と、この圧倒的な人波……っ! 街全体が祭り一色に染まっているわね!」

新緑模様の着物に羽織を重ねたヤヨイが丸眼鏡を直し、目を輝かせる。 人波の押し合いからヤヨイを護るようにすっと背後に回り込み、彼女のカメラバッグを肩へ背負い直す佐久間。

「ええ。浅草寺の観音様を引き揚げた三柱の郷土神を祀る『三社様』の大祭です。現代ではこの熱気がYouTubeで世界中へリアルタイム配信されているのですよ」

「世界中にライブ配信……! 新しい『東京福めぐり』のスタートにふさわしいパッションだわ!」
押し寄せる観光客の人波の中、佐久間は力強い左腕を差し出し、ヤヨイの手をしっかりと包み込んだ。

[2. 二天門やぶの『ざるそば・てんぷらそば』と『大丈夫お守り』]

宮神輿の迫力あふれる練り歩きを取材した二人は、境内の東側・二天門を出てすぐの老舗蕎麦屋『二天門やぶ』へと駆け込んだ。

熱気で火照った身体に、運ばれてきた冷たい「ざるそば」の切れ味ある喉ごしと、揚げたてサクサクの「てんぷらそば」の香ばしいお出汁がじんわりと染み渡る。

「はぁ〜っ……! 祭りの熱気のあとにいただく、二天門やぶさんの冷たいざるそばと天ぷら……っ! お出汁の旨味が効いていて、生き返るような美味しさだわ、佐久間君!」

「ええ。熱狂のあとの老舗のお蕎麦は、三社様からの至福のご褒美ですね」

佐久間は優しく目を細めると、授与所で拝受していた朱地に金の刺繍が眩しい『大丈夫お守り』をヤヨイの手の上にそっと乗せ、自身の大きな手でガチッと力強く包み込んだ。

「あ……佐久間君……っ?」

「ヤヨイさん。この大混雑の境内でもあなたを護り抜いたように、これから始まる『東京福めぐり』の旅も、僕が隣にいればあなたの未来は絶対に『大丈夫』です。僕たちの新しい旅も、二人で歩む未来も、僕がすべて最高のハッピーエンドへ導きます。……僕の人生の主役は、一生ヤヨイさん、あなただけです」

「……っ、もう! 三社祭の熱気とお蕎麦屋さんの中で、そんな真っ直ぐな瞳で見つめながら『大丈夫』なんて言われたら……っ。胸が熱くなって、丸眼鏡が嬉しさで曇っちゃうじゃない。……あなたという最高のパートナーがいるなら、私、どんな新しい未来へだって絶対に『大丈夫』だわ!」

二天門を抜けて届く祭りの賑わいと、江戸前のお蕎麦の豊かな香り。 三社様の熱狂と『大丈夫お守り』の誓いに守られた二人の絆は、新しい『東京福めぐり』のスタートとともに、どこまでも深く、そして永遠に結ばれていくのだった。

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