【特別短編:鳥越神社編】『白鳥橋の導きと、ARCのコーヒーに咲く『笑顔』の福』
[1. 白鳥橋の痕跡と、3社御朱印の至福]
八月半ばの涼やかな朝。浅草橋から蔵前へと続く下町を進み、鳥越神社の参道手前に置かれた古い親柱の痕跡『白鳥橋(しらとりばし)』の前に立つ二人。
「はぁ……っ! 佐久間君、見てちょうだい! 道端に残る小さな『白鳥橋』の痕跡……ここにも深い歴史が眠っているのね!」
生成り色の夏着物を纏ったヤヨイが丸眼鏡を直し、目を輝かせる。 木々模様のジャケット姿の佐久間がヤヨイのカメラバッグを肩へ背負い直し、力強く左腕を差し出した。
「前九年の役で追いつめられた源義家公を、一羽の白鳥が浅瀬を示して救った伝説の橋です。義家公はその加護に感謝して『鳥越大明神』の社号を奉納しました。この白鳥橋は、まさにその導きの痕跡ですよ」
重厚な本殿で手を合わせた二人は、社務所で『鳥越神社』『福寿社』『志志岐神社』の3社分の力強い御朱印を拝受。都内最大級・約4トンの千貫神輿(せんがんみこし)の凛とした気魄に包まれる。
[2. ざるかぶり犬張子と、【竹+犬=笑】の解読]
授与所で拝受したのは、頭に竹籠(ざる)を被った愛らしい『ざるかぶり犬張子(いぬはりこ)』。
「まぁ……! どうして犬張子様がざるを被っていらっしゃるのかしら?」
佐久間は満足そうに口元を緩めると、犬張子をヤヨイの手の上にそっと乗せ、自身の大きな手でガチッと力強く包み込んだ。
「江戸っ子の粋な解読ですよ。『竹(ざる)』の下に『犬』を置く……この二つを組み合わせると、漢字の【笑】という字になります。家庭にいつも『笑顔(笑い)』が絶えないようにという深い祈りが込められているのですよ」
「【竹】と【犬】で【笑う】……! まぁ! なんて素敵な江戸のシャレと温かい祈りなのかしら……っ!」
[3. カフェ『ARC』の寛ぎと、一生の笑顔の誓い]
参拝後に向かったのは、鳥越神社の鳥居のすぐ向かいにあるスタイリッシュなカフェ『ARC(アーチ)』。鳥居の湾曲(アーチ)をモチーフにした空間で、真空管アンプから流れるジャズを聴きながら、冷たいアメリカーノと評判のキャロットケーキを味わう。
「はぁ〜っ……! 鳥居を眺めながらいただくアメリカーノとキャロットケーキ、なんてお洒落で落ち着く空間なのかしら、佐久間君!」
佐久間は優しく目を細めると、テーブルの上の犬張子とヤヨイの手の上に、自身の大きな手をそっと重ね直した。
「ヤヨイさん。かつて白鳥が源義家公を導いたように、僕も一生あなたの道を照らす白鳥になります。そして……この犬張子様のように、これから二人で歩む未来にも、一生あなたと僕の間に『笑顔』が絶えないように……僕はあなたを幸せにし続けます。僕の人生の主役は、一生ヤヨイさん、あなただけです」
「……っ、もう! 素敵なジャズが流れるカフェの中で、そんな真っ直ぐで男前な瞳で見つめながら『笑顔』を約束してくれるなんて……っ。どこまでもズルいのよ。丸眼鏡が嬉しさで曇っちゃうじゃない。……あなたという最高の導き手がいてくれるなら、私、どんな未来だって毎日ニコニコ笑顔で進んでいけるわ!」
ガラス越しに見える鳥越神社の鳥居と、夏の木漏れ日。 白鳥明神の導きと【笑】の犬張子に見守られた二人の絆は、新しい『東京福めぐり』の旅路で、どこまでも温かく、そして永久(とわ)に結ばれていくのだった。

