【特別短編:戸越八幡神社編】『広き杜の福分けと、戸越銀座のぬくもりに誓う『半分の幸せ』』
[1. まっすぐに伸びる緑の参道と、「江戸越え」の記憶]
九月中旬の柔らかな秋風が吹き抜ける品川・戸越。 都営浅草線・戸越駅の出口から下町の風情残る路地を抜けると、目の前に現れたのは、都心の喧騒を忘れさせる広々とした緑の杜だった。 鳥居から拝殿へとまっすぐに伸びる清々しい敷石の参道に、ヤヨイは胸いっぱいに深呼吸をする。
「はぁ……っ! 佐久間君、見てちょうだい! 鳥居から拝殿までまっすぐに伸びるこの参道……! 都会の真ん中とは思えないほど敷地が広くて、木々の緑が優しく包み込んでくれるようだわ!」
撫子色の単衣着物に身を包んだヤヨイが、丸眼鏡の位置を直しながら取材ノートを抱きしめて目を輝かせる。 木々模様のジャケット姿の佐久間がヤヨイのカメラバッグをサッと片肩へ背負い直し、力強く左腕を差し出した。
「大永六年に清水から御神体が現れたのが始まりです。かつてこの地を越えて江戸へ入ったことから『江戸越えの村』と呼ばれ、それが『戸越』という地名の発祥となりました。地域の暮らしと旅人を五百年も見守り続けてきた、懐の深い八幡様ですよ」
[2. 福分け猿と夢叶うさぎ、端正な通常御朱印]
拝殿で二拝二拍手一拝の祈りを捧げた二人は、参道脇にちょこんと佇む愛らしい石像の前へ。 優しい笑みを浮かべる『福分け猿』と、丸いフォルムの『夢叶うさぎ』の頭をそっと撫でる。
「まぁ……! なんて愛らしいお猿様とうさぎ様なのかしら! 災いを去らせて福を分けてくださるお猿様と、ぴょんと跳ねて夢を叶えてくださるうさぎ様……見ているだけで心がほっこり温まるわね」
「ええ。授与所には華やかな限定御朱印も並んでいますが、今日いただくのは墨書と朱印が凛と引き立つ『通常の御朱印』にしましょう。五百年の歴史が持つ、飾らない格式と誠実さが一番伝わってきますから」
ヤヨイは嬉しそうに頷き、端正な通常御朱印を大切に御朱印帳へと納めた。
[3. 杜の木陰の誓い——『福分け・夢叶守』と半分の幸せ]
欅の梢がさらさらと音を立てる木陰のベンチへ。佐久間はジャケットの内ポケットから、授与所で拝受した『福分け・夢叶守』を取り出した。
佐久間はそのお守りをヤヨイの細い手のひらに乗せると、そのまま彼女の指先ごと自身の大きな手でガチッと力強く包み込んだ。
「あ……佐久間君……っ?」
「ヤヨイさん。福分け猿が福を分け合い、うさぎが夢を跳躍させるように……これから僕たちが紡ぐ未来の喜びも、仕事の成功も、日常の幸せも、すべてあなたと半分ずつ分かち合っていきたい。あなたの夢は僕の夢です。僕が最高のプロデュースで、あなたの夢をすべて叶えてみせます。……僕の人生の主役は、一生ヤヨイさん、あなただけです」
「……っ、もう! 広々とした杜の木漏れ日の中で、そんな真っ直ぐで男前な瞳で見つめながら『福を分かち合おう』なんて言ってくれるなんて……っ。胸が熱くなって、丸眼鏡が嬉しさで曇っちゃうじゃない。……あなたとなら、どんな夢だって一緒に叶えていけるわ!」
[4. 戸越銀座の食べ歩きと、最終話『蛇窪神社』へ]
参拝を終えた二人は、神社に隣接する全長一・三キロメートルの『戸越銀座商店街』へ。 揚げたてアツアツの名物コロッケや焼きたてのたい焼きを半分こしながら、活気あふれる下町の笑顔に包まれる。
「んん〜っ! サクサクのコロッケ、佐久間君と半分こして食べると何倍も美味しいわね!」
「ええ。温かい下町の空気は、心を一番豊かにしてくれますね。……さあヤヨイさん、七社を巡り終え、次はいよいよ全八社の結び、最終話です」
「ええ! 最後の舞台は……白蛇様と龍神様がお祀りされている【蛇窪神社】ね!」
「そうです。大願成就の御神徳が宿る聖地で、僕たちの東京福めぐりノートを最高のフィナーレで結びましょう」
「最後の最後まで、絶対に私の隣でエスコートしてね、佐久間君!」
「もちろんです。一生、あなたの隣で伴走し続けます」
夕暮れの戸越銀座に灯る温かな灯りと、二人の満面の笑み。 戸越八幡神社の福分けの心に見守られた二人の絆は、いよいよ迎える最終話『蛇窪神社』への期待を胸に、どこまでも甘く、そして力強く未来へと歩みを進めていくのだった。

